By Pam Rutherford
この人たちをパッと見ただけで後から思い出せますか?
多くの人は、人の顔と名前を一致させるのに苦労する時があるものだが、もし、何年も前にほんの一瞬見ただけの人の顔と名前を識別できるとしたらどうだろう?
道を渡っている女性を知っている。でも何処で会っただろう?
ああ、その女性は、数年前に選挙に行ったときに会った、投票所のヴォランティア・スタッフの一人だった。その女性に会ったのはおそらくほんの2~3分だろう。それも数年前に。
すぐに思い出せるようなタイプの顔だったように聞こえただろうか?
ジェニファーにとってはそうなのだ。彼女は、"スーパー・レコグナイザー" 、人の顔と名前を思い出すことに関してかなりの並はずれた能力を持った人物である。
実際、ほぼ絶対に人の顔を忘れないでいることができる。最初に、普通じゃないかもしれないことに気がついたのは家族との休暇中、飛行機の中で、あまり有名でない俳優を見分けた時のことだ。家族は信じなかったが、正しかったことが証明された。
しかし大学で本当に実感することになった、ジェニファーは他の人とは違っていたのだと。
「最初の数週間に沢山の人と会ったんだけど、全員のことを覚えてた、会った時間がどれだけ短かったかは関係ないの。そのあと、パーティーで会った人たちは、みんな私のことを覚えてないみたいだった。私はこう考えたものよ:あの人はすごく嘘つきだわ、3週間前にカフェで30秒間会ったのに、みんな私のことを覚えていない振りをするなんて信じられない、って。」
偶然の出会い
会ってから何年も過ぎていてたとしても問題ない。
ジェニファーは子供のころに2~3度会った人に、地下鉄で会った話をしてくれた、今、20歳年をとって白くなった髪をドレッドスタイルに纏めていたその人が誰なのかはっきりとわかったという。
「人は年をとるものだけど、私には顔が同じに見えるの」とジェニファーは言う。「私にとっては、人の顔は変わらないのよ、子供の時も大人になっても。何故だかわからないけど、記憶が呼び覚まされるのよ。」
まるで小気味良い手品のようだし、もしくは仕事の役に立つかもしれないが、研究者にとってはそれ以上の意味があるようだ。
ジェニファーの能力は、彼女とは逆の状況にある人たち、"フェイス・ブラインドネス" として広く知られている、相貌失認症に苦しむ人たちの研究をしている科学者の助けになるかもしれない。
クレアは49歳の4児の母親で、その症状を抱えている。
彼女は、2004年5月にウイルス性脳炎を発症し、重度の記憶喪失の上さらに、人の顔を見分けられず苦しんできた。
「退院して、誰だかわからない人たちの家に来たの、この人たちが自分の家族なんだと信じるしかなかったわ。エドは自分の夫なんだと信じるしかなかったし、自分自身に言い聞かせるしかなかった、この人が私が愛してる人で、この子供たちが私の子供たちなんだって。」
クレアの、顔に関する問題は続いている。彼女は今でも、子供たちが友達と一緒にいると、自分の子供を見分けることが出来ないでいる。しかし、最近の自慢話を披露してくれた、人ごみの中で、夫のエドを見つけ出したことを。それでもまだ、友人や家族を見分けるのに、様々な方法が必要なのだ。
鏡に映った自分の姿さえ、驚きを隠せない。
困難な状況
この症状を抱えて生活し、克服する方法を身につけるのは努力を要する上、クレアにとって人生は困難なままである。
「他人の者のように思える生活を続けるのは簡単なことじゃないし、それに、より多くの人と付き合うようになればなるほど、この相貌失認症というものがより大きな障害になるの。誰かの顔を見たときに捉えた知識と情報は当然全部必要なものよ。」
「誰も、その情報全部が自分からパッと消えてしまったらどんな感じがするか考えたりしないものよ。誰にもそんなことが起きてほしくないわ。」
この症状は、相貌失認症、平常者、スーパーレコグナイザーと、たった3つの顔認識グループに分けられるものではないのかもしれない。
むしろ、顔認識の範囲というのがあるのかもしれない、と言っているのは認知神経科学研究所およびロンドン大学相貌失認症研究センターのブラッド・デュケイン氏である。
クレアの場合は、脳の損傷によって後天的に相貌失認症に陥ったのである。が、"発育性"相貌失認症と呼ばれる多くの場合さほど深刻ではないもう1つのタイプがあり、こちらは先天的な障害である。
さらに、驚くことにこちらの症状はよくみられるのだ。50人に1人が相貌失認の可能性があるのだが、ほとんどの場合本人は知らないだろう。
一方で、科学者たちはスーパーレコグナイザーについての研究を始めている、相貌失認症の注目度が高まったためにしばしば接触するからだ。
科学者たちは、スーパーレコグナイザーの脳を解明し始めた、彼らの神経回路を解析し、脳灰白質にどういった構造的または機能的な違いがあるのかを分析しているのだ。
標準的な顔認識テストでは、スーパーレコグナイザーたちは常に全問正解だ、ところが、その顔が非常にぼやけている場合でさえ彼らはほぼ全問正解するのだ、と認識の専門家である、ゲティスバーグ大学のリチャード・ラッセル教授は言っている。
「この研究が意味する最も衝撃的なことは、はみんなが同じものを見ていると思っているのだが、少なくとも顔を見ることに関しては、同じものを見ているわけではないことをこの研究が示唆しているということである。」
「スーパーレコグナイザーたちは、他の人とは異なる方法で世界を見ている、それは顔を見ることだけに限らず、違った捉え方で世界を見ている可能性がある。そこで、我々は、このことが、精神や脳の働きについて理解する上で、非常に役に立つだろうと考えている。」
相貌失認症患者のように障害に苦しんではいないとはいえ、スーパーレコグナイザーたちは時々それでも自分の態度を変えることを選んでいる。
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